阿部哲茂法律事務所 トピックス

法律の話題を載せております。

2020.07.18

【大神亮輔】

コラム

定期金賠償

交通事故で重度の後遺障害が残存したとき,症状固定後に必要となる将来介護費用や,後遺障害が残存したことによって収入減少が見込まれることに対する後遺症逸失利益を請求することが一般的です。
ほとんどの場合,これらは一時金で請求するのですが,一時金で請求する際,中間利息が控除されます。「中間利息控除」とは,非常にかいつまんで言うと,「5年後の100万円は今貰うといくらになるのか」という話なのですが,法定利率かつ複利で計算した割合を控除することになるので,大幅に目減りしていました。
この点に関し,先日,最高裁が,将来介護費・後遺症逸失利益について,一時金ではなく,毎月決まった金額を支払わせる,という定期金賠償を認める判決を下しました(令和2年7月9日判決)。今般の民法改正に伴い,法定利率が3%(変動制)となったため,控除される中間利息も減少することとなりますが,特に重度後遺障害が残存した場合においては,そもそも一時金で請求するのか,定期金で請求するのか,という点も検討する必要があることを明確に示したものと言えます。

交通事故に限らない話ですが,最新の判例も踏まえ,その時々で最善のリーガルサービスが提供できるよう努めていきたいと思います。

2020.06.16

【渡邊敬紘】

コラム

給料の前払いについて

昨今,「給料ファクタリング」や「給料前払いサービス」といった言葉を耳にする機会が増えたように思います。

 「給料ファクタリング」とは,業者が従業員から給料債権を額面より安く買い取ったうえ,給料日に給料が支払われると,従業員から額面どおりの給料を回収することをいいます。この「給料ファクタリング」については,金融庁から貸金業に該当するとの見解が表明されていますので,登録なく行うと刑事罰を科される可能性があります(貸金業法11条1項,同法47条2号)。
しかしながら,業者の中には,貸金業の登録を受けずに,数百から数千%もの法外な利息を手数料という名目で徴収する悪質なものも存在し,支払が滞ると,利用者どころか会社にまで取立ての電話をする例も生じているようです。

 こうした業者に対する対処法ですが,賃金は全額労働者に直接支払うことにされており(労働基準法24条1項),業者に対しては支払えませんので,断固とした態度で請求を拒絶することが重要です。

 他方で,「給料ファクタリング」と似て非なるものとして「給料前払いサービス」というサービスがあります。
 両者とも,給料日前に給料の支払いを受けられるという点で共通しています。しかし,「給料前払いサービス」の場合,サービス会社が使用者から委託を受け,使用者に代わって給料を立替払いし,後日,使用者に立替払金を請求する形になっています。このサービスについては,勤怠実績に応じた賃金相当額を上限とすることや,会社の支払能力を補完するために立替えを行っているわけではないことなど,一定の条件を満たす場合であれば,貸金業にあたらないという見解が金融庁から出されております。
 また,使用者がサービス会社を介して賃金を支払うことは,労基法24条1項の定める直接払いの原則との関係でも問題が生じる可能性があります。この点について,厚労省は,従業員がサービス会社から立替払いを受けるまで賃金債権が消滅しない場合には,同条に違反しないとの見解を発表しているところです。

 したがって,「給料前払いサービス」については,金融庁及び厚労省の通達を守る限りで,適法という扱いになります。もっとも,給料の支払義務を負うのは使用者ですので,サービス会社に対して,賃金の支払状況を確認するなどして,賃金の立替払いが適切になされるか把握しておく必要があります。

 昨今,Fintechの隆盛と共に,様々な業態のサービスが展開されていますが,給料の支払については,労基法や(場合によっては)貸金業法の規制が及ぶことに注意が必要です。

2020.06.01

【木村治枝】

コラム

特別定額給付金について

 先月,コロナウイルス感染症に伴う特別定額給付金の申請が開始されました。
 この特別定額給付金の給付金は,基準日である令和2年4月27日時点で,住民基本台帳に記録されている方に,1人当たり10万円給付されることとなっております(外国国籍の方も対象となります。)。
 そのため,同給付金の申請書は,住民票上の住所に送付されますが,DV被害がある場合等,特別な理由がある場合には,市役所等の相談コーナーに相談し,理由が認められれば,申出により申請書を交付してもらえるなど,配慮がされています。
 また,令和二年度特別定額給付金等にかかる差押さえ禁止等に関する法律により,同給付金については,差押えが禁止される差押禁止財産とされ,破産手続きにおいては換価の対象とされない自由財産に含まれる等の配慮もされているところです。
 
 精神的にも,経済的にも,苦しい状況が続いておりますが,収束すると信じ,できる限りの予防をしていきたいと思います。

2020.05.09

【伊塚允耶】

コラム

消滅時効について

コロナウイルスによる緊急事態宣言において,企業においても業務の縮小や停止を余儀なくされております。
このようなタイミングにおいて,民法が120年ぶりに大改正され今年の4月1日から施行されており,企業としてはかかる改正にも対応しなければなりません。
改正内容は多岐にわたりますが,企業による売掛金の管理については,改正民法がプラスの要素として働いております。
すなわち,従前の民法においては,売掛金を1年ないし3年間行使せずに放置していた場合には,時効により消滅してしまう危険性がありました。
例えば,工事の請負代金は3年,商品の売買代金は2年,飲食代金は1年というように消滅時効の期間が定められていました。
しかしながら,改正民法においては,このような区別を廃止し,原則として消滅時効の期間を5年とする改正がなされております。
したがって,原則として今年の4月1日以降に発生した債権については,債権の種類ごとの管理が不要となり,かつ,期間も5年となりますので,その意味においては,企業の債権管理は容易になるものと思われます。
(ただし,債権の発生が4月1日であっても,原因となる法律関係が4月1日より前の場合は旧民法が適用されますので注意が必要です。)

改正民法における消滅時効については一般論としては上記のとおりですが,不法行為に基づく損害賠償請求権などは時効の考え方が異なるため,ご不明な点がございましたら,弊所までご相談ください。

2020.04.23

【阿部哲茂】

お知らせ

新型コロナウイルスによる事務職員の執務時間の変更

当事務所は,新型コロナウイルス感染症を巡る非常事態宣言下,事務職員の勤務日数を週3日に減らしています。
このような執務体制を執らざるを得ないため,顧問先の皆様には大変ご迷惑をおかけすると思いますが,ご理解の程よろしくお願いします。

2020.04.17

【大神亮輔】

コラム

新型コロナウイルスに関する助成

緊急事態宣言による外出等の自粛や休校が続き,当初7都府県に発出されていた緊急事態宣言が47都道府県に拡大されるなど,市民生活への影響が日々大きくなってきています。
事業者においても,やむなく休業や業務の減縮を行うところが多く出るなど,事業活動にも重大な支障が出ており,今後も拡大する可能性も十分にあるところです。

現在発表されている助成金制度として,雇用調整助成金,小学校等の休校に伴う助成金制度があります。
前者は,売上等の生産指標が前年同月比で5%以上減少し,労働者を休業させるなどして雇用の維持を図る場合に休業手当等の一部を助成する制度です。
雇用調整助成金の制度自体は従前から存在しましたが,新型コロナウイルスの影響を踏まえ,特例として要件を緩和し,助成対象を拡大して運用しているものです。もっとも,休業が労使協定による必要があること,助成額が実給与額ではなく雇用保険基本手当日額を基準とすることなど,留意点もありますので,申請時にはご確認ください。
また,申請から実際に助成金が受けられるまで一定の期間(2か月が目安とされています。)を要するとのことですので,この点も念頭に置く必要があります。

後者は,休校した小学校や学童保育に通う子供の世話を保護者として行うことが必要になった労働者に対し,年次有給休暇とは別個の有給の休暇を与えた事業者に対する助成です。こちらは,実賃金を基準に算定されることとなります。

これらの助成金制度についても,新たな緩和措置や範囲の拡大の可能性もありますし,自治体独自の支援策など,日々情報が更新されています。未曾有の混乱の中ですが,我々も知識をアップデートし,必要なリーガルサービスを提供できるよう粉骨砕身努力して参ります。
体調には気を配りつつ,何とか乗り切っていきましょう。

2020.03.23

【木村治枝】

コラム

勉強会

先日,弁護士会で開催された勉強会に出席しました。
 
テーマは,相続に関するもので,被相続人の生前にされた預金の引き出しに関する紛争における実務的な問題についてでした。

この問題は,例えば,ご両親の介護等を行っていた長男が,ご両親から預金の管理を依頼され,その預金を引き出して介護費等に使用したものの,ご両親が亡くなった後に,他の兄弟から「(長男が)自分のために勝手に使ったはずだ。」と言われ,損害賠償請求を求められるといった事案に関するものです。

 介護をしているときには,まさか,将来このような紛争が生じるとは考えておらず,何も証拠がない,ということもあります。この場合,本当に,ご両親の介護費や生活費等にあてたとしても,そのことの証拠がなければ,賠償を命ぜられる恐れがあるのです。
このような紛争を発生させないためにも,ご両親に限らず,ご自身以外の預金の管理を依頼された場合には,何にいくら使用したのかを記録するとともに,領収書等を保管しておくことが必要です。

2020.03.03

【渡邊敬紘】

コラム

配偶者居住権とは

本年4月1日より,民法(債権法改正)が施行されますが,平成30年に改正された相続法のうちの一部の規定についても,同日から施行されることになっています。今回のコラムでは,その中でも配偶者居住権についてご説明します。

配偶者居住権とは,残された配偶者が,一定の事情が認められるときは,死別した配偶者とこれまで居住していた建物(居住建物といいます)に引き続き居住することのできる権利のことです。

これまでは,残された配偶者が,以前から居住していた建物に引き続き居住することを希望する場合,遺産分割協議において,居住していた建物の所有権を取得する必要がありました。しかし,この建物の評価額が高額となった場合,配偶者が他の遺産を十分に取得することができず,居住用の建物は取得したけれども生活費が不足するといった事態が起こることがありました。

また,こうした事態を避けるために,他の相続人に建物の所有権を取得してもらい,配偶者がこの相続人から建物を賃借するという方法をとることもあります。しかし,この方法は,所有者となる相続人が賃貸借契約の締結を承諾することが前提になりますので,賃貸借契約の締結を拒絶されてしまった場合,配偶者は,遺産分割が終了した後は,建物に住めなくなってしまいます。

このように,以前の民法では,配偶者の死亡によって,残された配偶者が引き続き同じ建物に住み続けることが困難になることがありました。そうした事態を避けるために,新たに新設された制度が配偶者居住権という制度になります。

配偶者居住権を取得するには,遺産分割による方法と遺贈による方法とがあり,期間も柔軟に定めることができます。

当事務所は相続に関する相談も承っておりますので,遺産分割や遺言についてお困りのことがございましたら,お気軽にご相談ください。

2020.02.28

【伊塚允耶】

コラム

コロナウイルスに伴う出勤停止

連日のように新型コロナウイルスの感染のニュースが出ております。
学校が急に休校となるなど,働く人々の生活に多大な影響を及ぼしており,社会経済に対しても甚大な被害をもたらすものとなっております。

このように,新型コロナウイルスは現時点では最も警戒すべきリスクの一つとなっており,
企業としても,新型コロナウイルスに対する予防として,発熱や咳のある従業員を一律で出勤停止を行うといった措置を講じていることもあるようです。

前回のコラムでも触れておりますが,法的な観点からは,従業員の出勤に関する権限は使用者にありますので,出社させない命令(休業命令)も出すことができます。
ただし,使用者側の責に帰すべき事由による休業の場合には平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなりません(労働基準法26条)。

今回の新型コロナウイルスに関連した休業命令が使用者側の責めに帰すべき事由といえるかは諸般の事情を考慮することとなりますが,検討の要素として,新型インフルエンザに関する平成21年10月30日付厚生労働省発表が参考になるかと思われます。この発表では,

1 労働者が新型インフルエンザに感染し,医師によって休業するよう指導されている場合には,休業命令を発しても使用者側の事情による休業ではなく,休業手当を支払う必要はない

2 熱が37度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように,使用者の自主的な判断で休業させる場合は一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり,休業手当を支払う必要がある

3 感染者と近くで仕事をしていた労働者などの濃厚接触者でも,インフルエンザ様症状がない場合は職務の継続が可能となる。したがって,職務の継続が可能である労働者について,使用者の自主的判断で休業させる場合には,一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり,休業手当を支払う必要がある。

と記載されているところです。
したがって,当該発表を参考にするのであれば,新型コロナウイルスに感染したことが診断されている場合以外は休業手当を支払わなければならない,ということになります。
もっとも,新型インフルエンザと異なり,現時点では政府が積極的に感染防止をアナウンスしている状況ですので,上述2あるいは3のケースにおいても,使用者の責めに帰すべき事由に該当しないと解釈できる余地もあるところです。

いずれにせよ,未知のウイルスに対する火急の対応が求められておりますので,確度の高い情報を収集のうえ,ご対応ください。

2020.02.15

【大神亮輔】

コラム

従業員が感染症に罹患した場合

最近,新型コロナウイルスに関する報道が数多く見られます。
新型コロナウイルスに限らず,従業員が感染力が強い感染症に罹患した場合,雇用主としては,他の従業員への感染拡大を防止するために,当該従業員に対し自宅待機命令を発することが想定されます。

では,このような自宅待機命令を発した場合の賃金はどのように扱われるでしょうか。就業規則に定めがあるときは就業規則によるため,就業規則の定めがない場合を念頭に置きます。
基本的には,感染症に罹患したとの診察を受けた従業員を休業させることは,「使用者の責めに帰すべき事由による休業」(労基法26条)ではありませんので,休業手当の支払義務は生じません。
もっとも,新型コロナウイルスのように,感染症に罹患したとの確定診断を得るまでに時間がかかる場合には,疑わしい症状が出たことをもって自宅待機命令を課す場面も出てくると思います。この場合には,雇用主の経営判断による休業と評価されますので,平均賃金の60%以上の休業手当を支給する必要があります。

このほか,厚労省が定める指定感染症に罹患した場合や,従業員本人ではなく家族が感染した場合,従業員が濃厚接触者になった場合等,検討が必要になる場面が数多く出てきますので,対応にお困りの際はお気軽にご相談下さい。
4/10« 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 »